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副業女性の小規模企業共済|節税しながら将来の退職金を積み立てる制度

公開
執筆
橘 美咲

この記事の要約 / 読了時間:約12分(約4,800字)

個人事業主やフリーランスの退職金づくりに使える小規模企業共済を、副業で働く女性向けに整理します。掛金が全額所得控除になる節税の仕組み、加入できる条件、受け取り時の税制優遇、そして20年未満の解約で元本割れするといった注意点までを業界15年の編集長視点でまとめました。税務の最終判断は専門家にご相談ください。

小規模企業共済とはどんな制度か

「個人事業主に退職金はない」と諦めている女性は少なくありません。小規模企業共済は、その退職金を自分で積み立てられる国の制度です。

① 個人事業主のための退職金制度

小規模企業共済は、独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営する、小規模企業の経営者や個人事業主のための積立制度です。会社員に退職金があるように、事業主が廃業や引退に備えて掛金を積み立て、事業をやめるときにまとまった共済金を受け取れます。国が用意した制度のため信頼性が高く、掛金の税制優遇が手厚いのが特徴です。

② 掛金は月1,000円から柔軟に決められる

掛金は月額1,000円から70,000円までの範囲で、500円単位で自由に設定できます。副業の収入が安定しない時期は少額から始め、利益が増えたら増額するといった調整が可能です。掛金の増額・減額は後から手続きでき、事業の状況に合わせて無理なく続けられる設計になっています。

③ 加入者は幅広い小規模事業者

加入しているのは、商店やサービス業の個人事業主、フリーランス、一定規模以下の会社役員などです。副業を事業として営む女性も、要件を満たせば加入できます。全国で多くの小規模事業者が利用しており、老後資金づくりの選択肢として定着しています。

副業女性が加入できる条件

副業をしていれば誰でも入れるわけではありません。加入には「事業の実態」があることが前提になります。

① 事業所得として申告できる実態が必要

加入の前提になるのは、副業が「事業」として営まれていることです。継続的・反復的に活動し、事業所得として確定申告できる実態があれば、副業でも対象になります。開業届を提出して個人事業主として活動している女性は、要件を確認したうえで検討できます。

② 給与所得だけの会社員は対象外

気をつけたいのは、勤務先からの給与所得しかない会社員は加入できない点です。副業がアルバイトのような「給与」で事業所得がない場合は、対象になりません。あくまで自分で事業を営む立場にあることが条件で、雇われて働く分は含まれないと理解しておくとよいです。

③ 従業員数などの規模要件

「小規模」企業向けの制度のため、常時使用する従業員数に上限があります。業種によって基準は異なりますが、多くのフリーランスや一人で営む個人事業主はこの範囲に収まります。一人で副業をしている女性であれば、規模の面で問題になることはほとんどありません。

④ 加入手続きに必要な準備

加入時には、確定申告書の控えや開業届の控えなど、事業を営んでいることを示す書類が求められます。まだ開業届を出していない場合は、先に個人事業主としての届け出を済ませておくと手続きがスムーズです。詳しい必要書類は加入窓口で確認できます。

掛金が全額所得控除になる節税効果

この制度の最大の魅力が、掛金の全額を所得から差し引ける点です。積み立てながら毎年の税負担を軽くできます。

① 小規模企業共済等掛金控除の仕組み

支払った掛金は、その全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象になります。生命保険料控除のように上限で頭打ちにならず、払った分がまるごと課税所得を押し下げます。年間で最大84万円まで控除でき、所得税と住民税の両方が軽くなるのが大きな利点です。

② 節税額は税率で決まる

実際にいくら軽くなるかは、その人の税率で変わります。たとえば課税所得が高く、所得税と住民税を合わせて約20%かかる方が月3万円を積み立てると、年36万円の控除で7万円ほど税負担が下がる計算です。所得が高いほど節税効果は大きくなり、利益が伸びてきた副業ほど恩恵を受けやすいです。

③ 前納で調整する使い方

掛金は1年分をまとめて前納することもできます。年末に利益が想定より多く出た年は前納で控除額を増やし、その年の課税所得を調整するといった使い方が可能です。前納した掛金もその年の控除に含められるため、決算期の節税対策として活用する事業主が多いです。

月額掛金 年間掛金額 所得控除額 節税額の目安
10,000円 120,000円 120,000円 約24,000円
30,000円 360,000円 360,000円 約72,000円
70,000円 840,000円 840,000円 約168,000円

※節税額は所得税・住民税あわせて税率20%と仮定した概算です。実際は課税所得により変わります。

受け取り時の税制優遇と共済金の種類

入り口の節税だけでなく、受け取るときの課税も軽く抑えられる設計です。共済金の種類を知っておくと安心です。

① 受け取り事由で決まる4種類の共済金

共済金は、受け取る事由によって共済金A・共済金B・準共済金・解約手当金の4種類に分かれます。廃業したときは共済金A、65歳以上で一定期間積み立てた後の老齢給付は共済金B、法人化して役員になった場合などは準共済金にあたります。事由によって戻ってくる金額の割合が変わる仕組みです。

② 一括受け取りは退職所得、分割は雑所得

受け取り方は一括・分割・両者の併用から選べます。一括で受け取ると「退職所得」として扱われ、退職所得控除が使えるため税負担を抑えられます。分割で受け取る場合は「公的年金等の雑所得」となり、こちらも公的年金等控除の対象です。どちらも通常の所得より軽い課税で受け取れる点が魅力です。

③ 長く続けるほど有利になる

共済金は、掛金を納めた期間が長いほど受け取れる額が増える設計です。特に廃業や老齢給付による受け取りでは、納付月数に応じて金額が上乗せされます。逆に短期で任意解約すると戻り率が下がるため、老後まで長く続ける前提で始めることが、制度を活かすうえで大切です。

加入前に知っておきたい注意点

メリットの大きい制度ですが、始める前に理解しておきたい弱点もあります。良い面と弱点の両方を見て判断することが大切です。

① 20年未満の任意解約は元本割れの恐れ

納付期間が20年(240か月)に満たないうちに自分の都合で任意解約すると、受け取る解約手当金が払い込んだ掛金の合計を下回ることがあります。これがいわゆる元本割れです。短期で引き出す前提の資金には向かず、あくまで長期で寝かせるお金として考える必要があります。

② 掛金は事業の経費にはならない

掛金は「所得控除」であって、事業の必要経費ではありません。事業の赤字を増やして事業所得を圧縮する性質のものではなく、あくまで個人の所得から差し引く控除です。経費と混同すると節税の見込みを誤ることがあるため、区別して理解しておくとよいです。

③ 資金繰りには貸付制度も使える

積み立てたお金は基本的に事業をやめるまで引き出せませんが、契約者貸付制度を使えば掛金の範囲内で低い金利の融資を受けられます。急な資金需要に備えつつ積み立てを続けられるため、解約する前にこの制度を検討する事業主も多いです。

加入前に確認したいチェックリスト
・副業を事業所得として申告できる実態があるか
・当面使う予定のない長期の余裕資金で始められるか
・毎月無理なく続けられる掛金額に設定したか
・iDeCoなど他の制度との優先順位を整理したか

NISA・iDeCoとの違いと使い分け

老後資金づくりの制度は他にもあります。それぞれの性格を知って組み合わせることが大切です。

① 目的と対象の違い

小規模企業共済は事業をやめるときの退職金づくり、iDeCoは老後の年金づくり、NISAは幅広い資産形成が主な目的です。小規模企業共済は個人事業主など加入できる人が限られる一方、NISAは会社員でも主婦でも利用でき、対象の広さが異なります。目的に合わせて選ぶことが出発点になります。

② 節税・流動性・元本の比較

掛金が全額所得控除になる点は、小規模企業共済とiDeCoに共通する強みです。NISAは掛金の所得控除こそないものの、いつでも引き出せる流動性と運用益の非課税が魅力です。小規模企業共済とiDeCoは途中で引き出しにくい代わりに、入り口の節税が大きいという違いがあります。

③ 併用して役割を分ける

これらの制度は併用でき、役割を分けて使うのが現実的です。すぐ使うかもしれないお金はNISA、老後まで動かさないお金はiDeCoや小規模企業共済、といった具合です。副業の利益や生活の余裕に応じて配分を決めると、無理なく将来に備えられます。制度の併用条件は個別に異なるため、正確な判断は専門家にご相談ください。

項目 小規模企業共済 iDeCo NISA
主な対象 個人事業主・小規模役員 広く個人 広く個人
掛金の所得控除 あり(全額) あり(全額) なし
引き出しやすさ 原則 廃業・引退時 原則 60歳以降 いつでも可

よくある質問

副業でも小規模企業共済に加入できますか。

事業所得として申告できる事業の実態があれば加入できます。給与所得だけの会社員は対象外です。開業届の提出など、事業を営んでいることを示せる状態が前提になります。

掛金は途中で変更できますか。

月1,000円から70,000円の範囲で、500円単位で増額・減額できます。収入が不安定な副業でも、状況に合わせて調整しながら続けられます。

途中でやめたら損をしますか。

納付期間が20年未満で任意解約すると、元本割れする場合があります。短期で引き出す資金には向かず、長期で続ける前提で始めることをおすすめします。

iDeCoと両方に加入できますか。

併用できます。どちらも掛金が全額所得控除になるため、節税を重ねられます。ただし家計に無理のない範囲で掛金を設定することが大切です。

掛金は事業の経費にできますか。

経費にはできません。掛金は必要経費ではなく所得控除として扱います。経費と混同すると節税額の見込みを誤るため、区別して理解しておくとよいです。

私はライブチャット代理店で15年、女性たちのお金の相談に寄り添ってきました。個人事業主として働き始めた方から、「会社員のような退職金がないのが不安」という声を何度も聞いてきました。そして、その不安を支える小規模企業共済という制度を知らないまま過ごしている女性が、思いのほか多いことにも気づきました。

この記事で私が伝えたかったのは、副業であっても事業の実態があれば、節税をしながら将来の退職金を自分の手で用意できるということです。入り口の所得控除は大きく、長く続けるほど報われる設計になっています。会社員のような後ろ盾がないからこそ、こうした制度を味方につける価値は大きいと感じています。

ただし、長期で寝かせるお金であること、短期で解約すると元本割れの恐れがあることも忘れないでください。焦って満額を積むより、余裕資金の範囲で無理なく始めるほうが結局は続きます。まずは自分が加入の対象になるかを確認するところから、あなたのペースで一歩を踏み出してみてください。

— Belle Work 編集長 / 橘 美咲

この記事を書いた人

橘 美咲

編集長

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出版社で女性誌の編集を5年経験した後、ライブチャット・配信プロダクション業界の代理店事業に転身。Belle Work創刊編集長として、チャトレ・パパ活・在宅副業に関わる女性たちに向け、煽らず批判せず冷静に現実と知恵を伝える編集方針を貫く。法律監修・税務監修との連携で、女性たちの権利保護とコンプライアンス対応を重視。執筆・監修した記事は累計1,000本超。風営法・特商法・出会い系規制法・売春防止法の業界実務に詳しい。

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