お金・税金

累進課税

読み
ルイシンカゼイ

累進課税とは

累進課税とは、課税の対象となる所得や金額が大きくなるほど、それに応じて税率も段階的に高くなっていく課税方式のことです。日本の所得税がその代表で、2026年時点では課税所得の大きさに応じて5%から45%まで7段階の税率が設定されています。ここで大切なのが「超過累進税率」という考え方です。これは、所得全体に一律で高い税率がかかるのではなく、区切られた金額の帯ごとに、その帯の税率がかかる仕組みを指します。たとえば課税所得が330万円の人は、そのうち195万円までの部分に5%、195万円を超えて330万円までの部分に10%というように、帯ごとに分けて計算されます。一方で課税所得が700万円になると、より高い帯の税率(20%や23%)が上乗せされていきます。つまり「収入が増えるほど、増えた分に対してより多く負担してもらう」ことで、所得の再分配を図るのが累進課税の狙いです。副業の収入も本業の給与と合算されて計算に乗るため、副業が育ってきた方ほど知っておきたい税制です。

副業と累進課税:所得は合算されて税率が決まる

累進課税で意識しておきたいのが、副業の所得は本業の給与所得などと合算した「課税所得の合計」で税率が判定される点です。チャットレディや在宅ワーク、物販といった副業で得た利益は、給与とは別枠で低い税率が適用されるわけではありません。本業の課税所得がすでにある帯に達している場合、副業の利益はその上の帯に積み上がっていくイメージになります。たとえば本業ですでに課税所得が330万円ほどある方が副業で50万円の利益を出すと、その50万円には10%や20%といった、本業部分よりも高い税率がかかることがあります。「副業だから税金は少しだけ」と考えていると、確定申告のときに想定より納税額が大きく感じられることがあるのはこのためです。個別の税率区分は年ごとに見直される可能性もあるので、最新の税率表を確認するか、税理士に相談すると安心です。

よくある誤解:「稼ぎすぎると手取りが減る」は本当か

累進課税でいちばん多い誤解が、「税率の境目を1円でも超えると、全体に高い税率がかかって手取りが逆に減ってしまう」というものです。結論からいうと、日本の所得税は超過累進税率なので、境目を超えても手取りが逆転して減ることは基本的にありません。高い税率がかかるのは、あくまで境目を超えた「その超えた部分」だけだからです。たとえば課税所得が195万円を1万円だけ超えても、10%の税率がかかるのはその1万円に対してのみで、195万円までの部分はこれまでどおり5%のままです。ですから「これ以上稼ぐと損だから仕事を減らそう」と考える必要は、所得税に関してはありません。ただし、配偶者控除の基準や社会保険の扶養の壁など、税率とは別のラインで手取りに影響が出るケースはあります。そこは累進課税とは別の話として分けて考えると混乱しにくくなります。

累進課税で払いすぎないための3つの基本

累進課税は所得が大きいほど負担も増える仕組みなので、課税の対象になる所得そのものを適正に小さくしておくことが、無理のない節税につながります。基本として3つを押さえておきましょう。①経費をもれなく計上する。通信費・機材代・衣装・撮影費など、副業のために使ったお金は経費にでき、その分だけ課税所得が下がります。②青色申告特別控除を活用する。開業届と青色申告承認申請を出しておけば、最大65万円を所得から差し引けます。③各種所得控除を確認する。生命保険料控除・小規模企業共済等掛金控除(iDeCoなど)・医療費控除などは、うまく使えば課税所得の帯を一段下げられることもあります。控除の適用条件は人によって変わるため、判断に迷うときは税務署の相談窓口や税理士など専門家に確認してください。

取材の場で「累進課税って要は罰ゲームですよね」とこぼした女性がいて、印象に残っています。稼いだら稼いだ分だけごっそり持っていかれる、というイメージが強いのだと思います。でも実際に一緒に計算してみると、増えた部分にだけ税率が上がるので、手取りが減ることはない。誤解が解けた瞬間に、その方の表情がふっと軽くなったのを覚えています。累進課税は、頑張って収入を伸ばしていく人ほど正しく理解しておきたい仕組みです。数字が苦手でも大丈夫。まずは仕組みを知って、経費と控除を丁寧に積み上げること。それだけで納税は「怖いもの」から「予測できるもの」に変わります。迷ったら一人で抱えず、専門家に相談してくださいね。

— Belle Work 編集長 / 橘 美咲