副業解禁は本当に進んだのか|企業の就業規則の変化を業界15年が読み解く2026

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「副業がバレたら困る」という不安の裏側で、企業側はこの数年で副業を認める方向へ舵を切ってきました。業界15年の私が、厚生労働省のモデル就業規則やガイドラインの改定、各種調査のデータをもとに、会社の副業容認がどこまで進んだのかを整理します。「解禁」と「容認」の距離、自社ルールの読み方まで、環境の変化を社会の視点でひもといていきます。

目次

  1. 副業解禁の現在地をデータで見る
  2. 就業規則が変わってきた背景
  3. モデル就業規則の改定が与えた影響
  4. 「解禁」と「容認」の実際の距離
  5. 会社ごとに変わる副業規定の読み方
  6. これからの副業と会社の関係

副業解禁の現在地をデータで見る

「副業解禁が進んだ」とよく耳にしますが、実態はどうなのか。まずは数字で全体像を確認します。

① 容認する企業はどこまで増えたか

かつては副業を禁じる会社が当たり前でした。ここ数年で流れは変わり、複数の調査で、副業を認める企業はおおむね半数前後まで増えたと報告されています。「認めない」が多数派だった時代から、「条件つきで認める」が広がる時代へ移ってきたのは確かです。ただし「どの会社でも自由」というほどではない点は押さえておきたいところです。

② 「全面容認」と「条件付き容認」の差

容認と一口に言っても中身はさまざまです。誰でも自由にできる「全面容認」はまだ一部で、多くは「申請して許可を得れば認める」という条件付きの形をとっています。「うちは副業OK」と聞いても、実際には手続きや制限がぶら下がっていることが多い点に注意したいところです。

③ 業種・規模による温度差

副業への姿勢は、業種や会社の規模によっても差があります。IT・サービス系や新しい企業では容認が進みやすく、伝統的な業種や大規模組織では慎重な姿勢が残りやすい傾向があります。「世の中が解禁した」ではなく、自分の会社がどの層に近いかで見たほうが実態に近いです。

区分会社の姿勢の目安
全面容認事前の届出のみ、または手続きなしで副業できる
条件付き容認申請と許可が必要。競業や情報漏洩などに制限がかかる
原則禁止(例外あり)就業規則では禁止だが、申請すれば個別に判断される
全面禁止就業規則で副業そのものを認めていない

就業規則が変わってきた背景

なぜ企業は副業を認める方向に動いたのか。制度と社会の両面から整理します。

① 人手不足と人材のつなぎとめ

背景の一つは、深刻な人手不足です。優秀な人ほど「副業も認めてくれる会社」を選ぶ時代になり、副業を一律に禁じることが採用や定着のマイナスになりかねません。賃金を大きく上げにくい企業にとって、社外での収入や経験を認めることは、社員をつなぎとめる現実的な手段にもなります。

② 働き方改革という国の後押し

もう一つは、国による後押しです。2018年前後から進んだ働き方改革のなかで、政府は副業・兼業を「原則認める」方向を明確に打ち出しました。国が旗を振ったことで、企業も「認めない理由」を説明しづらくなり、制度を見直す会社が増えていきました。

③ 収入の柱を増やしたい働き手の変化

働く側の意識の変化も見逃せません。物価高や将来不安のなかで、一つの会社の給料だけに頼ることへの不安が広がり、収入の柱を複数持ちたいと考える人が増えました。この「守りの副業」を求める声が強まったことも、企業が容認へ動いた土台になっています。

モデル就業規則の改定が与えた影響

大きな転機になったのが、国が示す「モデル就業規則」の改定です。一次情報として押さえておきたい変化です。

① 「原則禁止」から「原則容認」への転換

厚生労働省は、企業が就業規則を作る際の手本として「モデル就業規則」を公開しています。かつてはそこに「許可なく他社の業務に従事しない」という趣旨の規定が置かれていました。2018年の改定で、この副業を禁じる規定が削除され、「勤務時間外は他社の業務に従事できる」という方向へ書き換えられます。国が示す手本そのものが、禁止から容認へ転換した意味は小さくありません。

② ガイドラインの整備が後押しした

同じ時期に、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」も策定しました。2018年の策定後、2020年や2022年にも改定が重ねられ、労働時間の管理や健康への配慮、企業がどこまで副業を認めているかの情報公開など、実務のルールが少しずつ整えられてきました。

③ 手本が変われば会社も動く

モデル就業規則は法律そのものではありませんが、多くの企業が自社ルールを作る際の下敷きにしています。その手本が「禁止」から「容認」に変われば、後を追って就業規則を見直す会社が出てくるのは自然な流れです。「国の手本が容認になった」という事実は、社内で制度変更を提案する側にとって強い後ろ盾になりました。

「解禁」と「容認」の実際の距離

言葉のうえの「解禁」と、現場での「容認」のあいだには、まだ距離があります。ここを見誤らないことが大切です。

① 認めていても「申請・許可制」が主流

副業を認めている会社でも、多くは「事前に申請して許可を得る」仕組みをとっています。自由に何をしてもよいわけではなく、内容によっては認められないこともあります。この申請・許可制が主流である以上、「解禁された=黙って何をしてもよい」ではありません。手続きを踏むことが前提になっている点は、正しく理解しておきたいところです。

② 認められにくい副業の類型

容認する会社でも、線引きされやすい類型があります。本業と競合する仕事、会社の情報が漏れる恐れがあるもの、長時間労働で本業に支障が出るもの、会社の信用を損なうものなどです。「副業OK」でも、この線を越えるものは対象外になりやすい、という前提でとらえておくと、あとから慌てずに済みます。

③ 制度はあっても使いにくい空気

就業規則で認められていても、実際には「言い出しにくい」という空気が残る職場も少なくありません。前例が少なかったり、上司の理解が乏しかったりすると、制度があっても使われないままになります。ルール上の可否と、職場の雰囲気は別物として見ておく必要があります。

・本業と競合する事業ではないか
・会社の機密情報や顧客情報を使わないか
・本業に支障が出るほどの労働時間にならないか
・会社の信用や名誉を損なう内容ではないか
・就業規則で定めた申請・届出の手続きを踏んでいるか

会社ごとに変わる副業規定の読み方

最終的に自分に効くのは、国の方針よりも自社の就業規則です。読み方の要点を整理します。

① まず就業規則のどこを見るか

自分の会社がどうなのかは、就業規則を見るのが一番確実です。多くの場合、「服務規律」や「副業・兼業」といった項目に、副業に関する定めが置かれています。社内のイントラネットや総務で確認できることが多いので、うわさや同僚の話ではなく、まず現物にあたるのが基本です。

② 「許可」「届出」「禁止」の言葉の違い

規定の言葉づかいには意味があります。「許可が必要」なら会社の承認が前提、「届出でよい」なら知らせれば足りる、「禁止」なら原則認められない、と扱いが変わります。この違いを読み取らずに動くと、手続き漏れでトラブルになりかねません。どの言葉が使われているかで、必要な対応がまったく異なる点に注意したいところです。

③ 判断に迷ったら専門家へ

規定を読んでも判断がつかない、書き方があいまいで不安が残る場合は、一人で抱え込まないことをおすすめします。就業規則の解釈や労務の扱いは、社会保険労務士や弁護士など専門家の領域です。個別の状況は、こうした専門家に相談することで、正確な線引きが見えてきます。あいまいなまま進めて後悔するより、早めに確認しておくほうが安心だと考えています。

これからの副業と会社の関係

環境は、いまも変わり続けています。これからの見通しをまとめます。

① 情報公開と透明化が進む

これからは、会社が「副業を認めているかどうか」を、あらかじめ公開する流れが強まると見ています。求職者にとって副業の可否は会社選びの条件になりつつあり、隠すより示すほうが選ばれやすくなるからです。国のガイドラインも情報公開を促す方向にあり、「入社してみないと分からない」という状態は、少しずつ減っていくと考えています。

② 副業を前提にしたキャリア設計

働き手の側でも、副業を織り込んだキャリアの立て方が広がっていきそうです。一つの会社に依存しすぎず、複数の収入源やスキルを組み合わせる考え方は、将来不安の大きい時代に合っています。副業は「こっそりやるもの」から「設計に組み込むもの」へと、位置づけが移りつつあります。

③ 会社と個人の新しい距離感

副業の広がりは、会社と個人の距離感そのものを変えていきます。すべてを一社に委ねる関係から、必要な部分でつながりつつ、外にも足場を持つ関係へ。これは会社にとっても、多様な経験を持つ人材を得られるという利点があります。対立ではなく、互いの選択肢を尊重し合う関係へ。その移行の途中にいるのが、いまの副業をめぐる状況だと私はとらえています。

よくある質問

副業解禁は法律で決まったのですか

「副業を認めなければならない」という法律ができたわけではありません。国が示すモデル就業規則やガイドラインが容認の方向へ変わり、それを参考に各企業が判断している、というのが実態です。認めるかどうかは、最終的には会社ごとの就業規則によります。

モデル就業規則が変わると自分の会社も自動で変わりますか

いいえ、自動では変わりません。モデル就業規則は企業がルールを作る際の手本であり、法律ではありません。自社の就業規則が実際に効くルールなので、まずは自分の会社の規定を確認することが大切です。

就業規則で禁止されている場合、副業は絶対にできないのですか

禁止と書かれていても、申請すれば個別に認められる会社もあります。まずは規定の言葉づかいを確認し、判断に迷う場合は総務や、社会保険労務士など専門家に相談することをおすすめします。自己判断で進めるのは避けたほうが安心です。

会社が副業を認めていれば、住民税などで本業に知られませんか

制度上認められていても、税金の手続きによって会社に副業が把握される場合はあります。認められているなら過度に隠す必要はありませんが、申告や住民税の扱いが気になる場合は、税理士など専門家に相談すると確実です。

これから副業はもっと認められていきますか

全体としては容認の流れが続くと見ています。人手不足や働き手の意識変化、国の後押しが背景にあるためです。ただし業種や会社の規模による差は残るため、「世の中の流れ」ではなく自分の会社の状況で判断するのが現実的です。

女性誌の編集からこの業界に移って15年、私は「副業がバレたらどうしよう」という不安の相談を、数えきれないほど受けてきました。その不安の裏側には、会社が副業をどう扱っているのか分からない、という情報の欠けがあることが多いのです。制度の全体像を知らないまま、ただ怖がっている。そんな方をたくさん見てきました。

この記事で私が伝えたかったのは、環境はこの数年で確かに動いた、という事実です。国が示す手本は禁止から容認へ変わり、認める企業も増えてきました。ただ「解禁」という言葉の華やかさと、現場の「条件付き容認」には距離があります。その距離を正しく知っておくことが、過度な不安からも油断からも自分を守る土台になります。

最後に効くのは、世の中の流れではなく、あなたの会社の就業規則です。まず現物を確認し、迷えば専門家に相談する。その一歩を踏めるかどうかで、見える景色は変わります。正確な情報があれば、違う判断ができるはずです。環境の変化を味方につけて、あなたのペースで選択していってください。

— Belle Work 編集長 / 橘 美咲

✍️ 執筆:橘 美咲(たちばな みさき) / Belle Work 編集長|元女性誌編集者→ライブチャット代理店15年。業界キャリア15年、執筆・監修1,000本超。専門は業界コラム・法律・税務/チャトレ・パパ活実務/コンプライアンス
📅 公開日:2026年7月24日
🏷️ カテゴリ:業界コラム

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