106万円の壁
106万円の壁とは
106万円の壁とは、パートやアルバイト、副業として働く人が一定の条件を満たしたときに、勤務先の社会保険(健康保険・厚生年金)へ加入する義務が生じる年収の目安を指す通称です。具体的には「月額賃金8.8万円以上」というラインがあり、これを1年に換算するとおよそ106万円になることから、こう呼ばれています。パートで働く配偶者などが夫や親の扶養に入っている場合、この壁を超えると自分の給料から健康保険料と厚生年金保険料が天引きされるようになり、手取りが一時的に減る点がよく話題になります。たとえば時給1,200円で週22時間、月に約95時間働くと月収は約11万4,000円となり、月額8.8万円のラインを超えます。ここに勤務先の従業員規模や週の労働時間といった他の条件が重なると、社会保険加入の対象になります。よく混同される「103万円の壁」が所得税に関わる税金の壁であるのに対し、106万円の壁はあくまで社会保険(保険料の負担)に関わる壁である、という違いを押さえておくと整理しやすいです。なお制度は改正の議論が続いているため、最新の条件は個別に確認することをおすすめします。
106万円の壁がかかる条件:誰が対象になるのか
106万円の壁は、年収が106万円を超えれば自動的に全員に適用されるわけではありません。従来は、次の複数の条件をすべて満たしたときに勤務先での社会保険加入義務が生じるとされてきました。①週の所定労働時間が20時間以上であること。②月額賃金が8.8万円以上であること(年収換算で約106万円)。③2か月を超えて雇用される見込みがあること。④学生ではないこと。⑤勤務先が一定規模以上の企業であること(この従業員規模の基準は段階的に引き下げられてきました)。ポイントは、これらが「かつ(すべて満たす)」の関係になっていることです。たとえば月収が9万円あっても、週の労働時間が20時間未満であれば対象外になるケースがあります。逆に条件をすべて満たせば、勤務先を通じて社会保険に加入することになります。自分が対象になるかどうかは勤務先や年金事務所で確認できるので、迷ったら早めに問い合わせておくと安心です。
壁を超えるとどうなる?手取りと将来のメリット
106万円の壁を超えて社会保険に加入すると、まず健康保険料と厚生年金保険料が給料から天引きされます。負担額はおおよそ月収の15%前後(本人負担分)が目安で、月収11万円なら月1万5,000円ほどが引かれる計算になり、その分だけ手取りは減ります。ここだけを見ると損に感じますが、見落としてはいけないメリットもあります。①将来受け取る年金が増える。国民年金だけの人と違い、厚生年金が上乗せされるため、老後にもらえる年金額が手厚くなります。②病気やケガで働けないときの傷病手当金、出産手当金など、健康保険の給付が受けられる。③保険料の半分を勤務先が負担してくれる。国民健康保険や国民年金を全額自己負担するより、トータルで有利になる場合があります。手取りの減少を避けたいなら労働時間を調整して壁の手前に抑える方法もありますが、少し働く時間を増やして手取りの目減りをカバーし、保障を得るという選択肢もあります。どちらが得かは世帯の状況によって変わるため、判断に迷う場合は社会保険労務士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談すると、自分に合った働き方が見えてきます。
ライブチャット代理店で働いていた頃、扶養の範囲で働きたいという女性から「106万円と130万円、どちらの壁を気にすればいいの?」という質問を本当によく受けました。数字だけが独り歩きして、必要以上に働くのを怖がってしまう方が多かったのです。でも壁の正体は「保険料の負担が発生するライン」であって、超えた分だけ将来の年金や保障が積み上がるという側面もあります。手取りが一時的に減るのは事実ですが、そこだけで判断するのはもったいない。自分の家庭の収支と将来設計を一度紙に書き出してみて、それでも迷うなら専門家に相談する——それが遠回りのようで一番確実な近道だと感じています。
— Belle Work 編集長 / 橘 美咲


