公正証書
公正証書とは
公正証書とは、公証人(国が任命した法律の専門家)が当事者から依頼を受けて作成する、法的証明力の高い公文書のことです。普通の契約書と決定的に異なるのは、公証人が内容を確認したうえで作成するため、「この書類は本物である」という公的な証明が付く点です。さらに、お金の支払いに関する約束を盛り込んだ場合、裁判所の判決を待たずに直接強制執行(相手の財産を差し押さえる手続き)ができる「執行認諾文言」を入れることができます。たとえば、チャットレディとして働くことになったクライアントが報酬の受け取りに関して事務所と書面を交わす際、「毎月○日までに○円を支払う。支払いが遅れた場合は直ちに強制執行を受けても異議ない」という条項を公正証書に盛り込んでおけば、万が一未払いが発生したとき、弁護士を立てて裁判をしなくてもすぐに差し押さえ手続きへ進めます。作成は全国各地にある公証役場で行い、費用は取り決める金額に応じて数千円〜数万円程度です。副業や個人事業の場面で「口約束になっていないか」が心配なときほど、公正証書の活用を検討する価値があります。
公正証書が役立つ場面と作成の流れ
副業・フリーランスの現場で公正証書が特に有効なシーンは次の三つです。①報酬・ギャラの支払い約束を事前に明文化したいとき。②事務所や仲介業者と専属契約・業務委託契約を結ぶとき。③分割払いや後払い報酬など、支払い時期がずれる取り決めをするとき。作成の大まかな流れは、まず当事者が合意した契約内容を文書化し、公証役場に事前相談→公証人が内容を確認・修正→指定日時に当事者が役場へ出向き(代理人も可)、署名・押印して完成、という手順です。身分証明書(運転免許証やマイナンバーカードなど)と認印または実印が必要になります。原本は公証役場で20年間保管され、紛失しても再発行(謄本の交付)が可能なため、普通の契約書に比べて証拠としての信頼性が段違いに高くなります。
公正証書を使う際の注意点
公正証書は強力な書類ですが、使い方を誤ると自分自身を縛ることにもなります。注意したい点を挙げます。①執行認諾文言が入った公正証書にサインすると、自分が支払い義務を負う側になった場合も即座に強制執行の対象になります。内容をよく確認しないままサインしないことが重要です。②「公正証書を作れば完全に安全」ではありません。相手に差し押さえできる財産がなければ強制執行が空振りに終わることもあります。③費用は相手と折半にするケースもありますが、誰が費用を負担するかも事前に決めておきましょう。副業の現場では、事務所側から「公正証書を作りましょう」と提案されることがあります。内容が一方的に不利な条件になっていないかを、署名前に弁護士や法テラスなどに確認することをおすすめします。
編集長として15年以上、ライブチャット業界の取材を続けてきた中で、「報酬が払われなかった」「辞めさせてもらえない」という相談を何度も聞いてきました。そのたびに痛感するのは、トラブルが起きてからでは動ける手段が限られるという現実です。公正証書は地味に見えて、いざというときに自分を守る最も確実な手段のひとつ。面倒でも契約時に一手間かけておくことが、後悔しない副業につながります。
— Belle Work 編集長 / 橘 美咲




