給与所得控除
給与所得控除とは
給与所得控除とは、会社員やパートタイマーなど「給与」という形で収入を得ている人が、確定申告や年末調整で税金を計算する際に、給与収入から自動的に差し引かれる概算の経費相当額のことです。自営業者であれば実際にかかった経費(交通費・仕事道具・事務用品など)を一つひとつ帳簿に記録して「実際の経費」として差し引けますが、給与所得者の場合はそういった細かい記録を求めない代わりに、収入額に応じた一定の金額をまとめて控除してくれる仕組みになっています。たとえば年収150万円のパートの方であれば、給与所得控除は55万円(2020年以降の最低額)が適用されるため、課税の対象となる「給与所得」は150万円から55万円を引いた95万円となります。年収が上がると控除額も段階的に増え、年収360万円なら約78万円、年収600万円なら174万円といった具合です。ただし年収850万円を超えると控除額は195万円で頭打ちになります。給与所得控除は自分で申請しなくても会社の給与計算の中で自動的に反映されるため、多くの方は意識しないまま恩恵を受けている制度です。
副業収入と給与所得控除の関係
チャットレディやライブ配信などの副業収入は、原則として「事業所得」または「雑所得」に区分されます。給与所得控除はあくまで「給与」に対してのみ適用される控除であり、副業の報酬部分には適用されません。副業の収入から差し引けるのは、実際にかかった「必要経費」のみです。具体的に認められやすい必要経費の例として、以下のものが挙げられます。①配信用の機材・照明・衣装などの購入費、②インターネット通信費の業務使用分(自宅兼用なら按分)、③配信専用のメイク用品・美容費の一部。これらをきちんと記録・領収書保管しておくことで、副業の課税対象額を抑えることができます。本業の給与所得控除と副業の必要経費、それぞれの仕組みをセットで理解しておくと、節税の全体像が把握しやすくなります。
年収の壁と給与所得控除の実務的な注意点
扶養に入りながら副業をしている方にとって、給与所得控除は「年収の壁」を考える上でも重要なキーワードです。配偶者控除や社会保険の扶養認定で使われる「収入」「所得」という言葉は混同されがちですが、実務上は次の点を押さえてください。①社会保険の扶養判定(130万円の壁)は「給与収入の総額」で判断されるため、控除前の金額で考える必要があります。②所得税の配偶者控除は「合計所得金額(給与収入から給与所得控除を引いた後の金額)」が48万円以下かどうかで決まります。③副業の雑所得は給与の合計所得とは別に計算され、合算した結果が判定基準に影響します。手取りベースで考えていると計算がずれやすいので、「収入」と「所得」の違いを意識して確認することが大切です。不安な場合は最寄りの税務署や市区町村の窓口で無料相談を利用するのが確実です。
私が代理店に勤めていた頃、チャットレディとして働く女性から「給与所得控除って副業にも使えるんですよね?」と聞かれることが何度もありました。残念ながらそれは誤解で、副業報酬には使えません。ただ、本業の給与には自動で適用されているわけですから、「給与所得控除+副業の必要経費」という二段構えで節税を考えられると知るだけで、確定申告への心理的なハードルがだいぶ下がります。難しい制度ではありませんから、まず仕組みを正確に把握することが、お金と上手に付き合う第一歩だと思っています。
— Belle Work 編集長 / 橘 美咲


